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脚本術 「SAVE THE CATの法則」まとめ


 

この記事は、映画脚本の指南書「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術(ブレイク・スナイダー)」を、自分で使いやすいように「まとめ」た備忘録である。

 

【Chapter 1】

最初に良い「ログライン」を作る

ログラインとは、映画を1行(40字程度)で「どんな映画なの?」を説明する文章。

主人公のストーリーを簡潔に表現したもの。

 

1. 良いログラインには皮肉(これで上手くいくはず…… えっ!?)が必要。

この皮肉(=予想不可能)が「つかみ」になる。

 

2. 映画の全体像が(1と矛盾するが)なんとなく予想できること。

時間設定(クリスマスなど)、主人公の容姿や性格などで物語を想像させる。

 

3. ターゲット層と制作費(規模)、映画の雰囲気をスポンサー向けに明確にする。

 

たった1行で、これだけの要素が必要になる。

 

さらに、以下も必要。

4. 主人公を描写する形容詞。

5. 悪役を描写する形容詞。

6. 誰もが共感する目的。

 

ストーリーが透けて見えるようなタイトル

「ログライン」とセットになる題名をつける。

ただし、どんな映画につけてもOKなタイトルは平凡すぎる。

 

ログラインとタイトルは「どんな映画なの?」に対しての簡潔で効果的な答えになる。

 

テストマーケティング

「ログライン」と「タイトル」について、いろんな人に意見を聞いてみること。

この「まとめ」では、詳細を割愛する。

 

 

【Chapter 2】

映画の「ジャンル」を設定する

各ジャンルには、それぞれ特有のルールがある。

ジャンル特有の言語・リズム・目的を理解すること。

同じジャンルの作品からプロットや登場人物のヒントを探す。

昔ながらの物語に時代性をプラスする。

 

ジャンル一覧

1. 家のなかのモンスター

逃げ場のない空間。

人間のどん欲さからモンスターが生まれる。

とにかく走って逃げ、隠れる。

罪を犯した人間は殺され、罪に気づいた人間は助かる。

 

2. 金色の羊毛

主人公は何かを求めて旅に出る。

旅の途中、さまざまな人々や出来事と出会い、主人公は成長する。

最終的に発見するのは自分自身。

ポイントは、主人公の変化(=成長)。

 

3. 魔法のランプ

ある日突然、主人公の夢や願いが叶う。

しかし最終的に、主人公は元の生活に戻る。

また、主人公に呪いがかかるパターンもある。

懲らしめたほうがよい主人公でも、最後には救いを用意する。

 

4. 難題に直面した平凡な奴

どこにでもいそうな人間が、とんでもない状況に巻き込まれる。

大問題と(徹底的に)悪い奴が必要。

 

5. 人生の節目

思春期、中年の危機、老い、失恋……。

主人公は段階を踏みながら、コントロールできない力(人生)を受け入れていく。

最後に笑えるようになったとき、勝利が訪れる。

展開は基本的にどれも同じ。

 

6. バディとの友情

映画向きのジャンル。

ラブストーリーの変形。

最初はお互いを嫌っているが、徐々に相手の存在が必要になってくる。

結末近くで喧嘩別れになるが、お互いにエゴを捨てて仲直りする。

主人公の変化は、ほんのわずか。

 

7. なぜやったのか?

推理モノ。

誰がやったのかよりも、なぜやったのか?

登場人物の心の闇を描く。

観客は意外な結末に衝撃を受ける。

主人公の変化を描くものではない。

 

8. バカの勝利

「バカな負け犬」対「巨大な権力」を描く。

バカは背が低くてまぬけ、しかし運と勇気を持つ。

賢者であるバカの邪魔をする者は、ひどい目に遭う。

 

9. 組織のなかで

主人公は、新しく組織に入ってきた人物。

組織への誇りとともに、アイデンティティーの消失を描く。

集団を動かす狂気により、自滅的な結末が多い。

 

10. スーパーヒーロー

「難題に直面した平凡な奴」の対局。

超人的な力を持つ者の苦悩を描く。

ヒーローは周囲の人間から理解されない。

 


 

【Chapter 3】

主人公について

観客は主人公に注目し、自己投影する。

主人公は観客が応援(少なくとも理解)できる人物でなければならない。

主人公は観客を共感させながら、物語のテーマを伝える。

主人公は「どんな映画なの?」を補足する1要素。

 

主人公の条件

1. 設定された状況のなかで1番葛藤する。

2. 感情が変化するのに1番時間がかかる。

3. 楽しんでもらえる客層の幅が1番広い。

最大ボリュームの客層は「25歳未満の男性」。

ターゲット層から考えると、主人公には10代から20代の若者がふさわしい。

 

主人公の動機

人間は本能的で原始的なものに心を動かされる。

 

原始的とは?

1. 生き延びること

2. 飢えに打ち勝つこと

3. セックスすること

4. 愛する者を守ること

5. 死の恐怖に打ち勝つこと

 

典型的な役柄

観客が見たがる典型的な役柄は、ユング的な原型である。

昔から繰り返し登場し、同じ役割を果たしてきた。

1. 若くて明るいナイスガイ

2. かわいい隣の女の子

3. わんぱく小僧or賢いやんちゃ坊主

4. セクシーな女神

5. セクシーな男

 

ほか

任務を負って戦場に戻る男

訳ありな美女

愛すべき優男

おどけた道化師

賢き長老

魔法使いの小人

ペテン師

おしゃべりする動物

オールドミスの魔法使い

ほら吹き野郎

けちんぼ

 

典型的な役柄は、昔から変わらない。

 

 

【Chapter 4】

構成について

構成用テンプレート「ビートシート」を使う。

ビートシートは、1枚のシートに15のビートを配置する。

 

ビートシート

―――――――――――――――――――――――――

タイトル:

ジャンル:

日付:

 

1. オープニングイメージ(1):

2. テーマの提示(5):

3. セットアップ(1~10):

4. きっかけ(12):

5. 悩みのとき(12~25):

6. 第1ターニングポイント(25):

 

7. サブプロット(30):

8. お楽しみ(30~55):

9. ミッドポイント(55):

10. 迫り来る悪い奴ら(55~75):

11. すべてを失って(75):

12. 心の暗闇(75~85):

13. 第2ターニングポイント(85):

 

14. フィナーレ(85~110):

15. ファイナルイメージ(110):

 

( )はページ数を示す

―――――――――――――――――――――――――

 

映画の脚本は、1分1ページで110枚が基本。

 

ストーリーは、3幕で構成される。

1幕(テーゼ)は、主人公のいる最初の世界。

2幕(アンチテーゼ)は、主人公は正反対の世界に入っていく。

3幕(ジンテーゼ)は、新しい世界と古い世界を融合させる。

主人公は、自らの手で新たな世界(ジンテーゼ)をつくりだす。

 

■1幕(テーゼ)

1. オープニングイメージ(1)

1分で、映画のスタイル、ジャンル、スケールを設定し、主人公を紹介する。

「ファイナルイメージ」と対になる。

 

2. テーマの提示(5)

5分め。

テーマの提示は明確でなければならない。

脇役が主人公に対して質問することが多い。

その質問が主人公にとって、重要な意味を持つことになる。

質問の後、テーマに対する議論が行われる。

 

3. セットアップ(1~10)

1. 登場人物全員の特徴を示しながら紹介する(もしくは、存在がほのめかされる)。

2. のちに起こる問題の原因となる行動を提示する。

3. 主人公が、最後にどのように変化すべきか示す。

4. 主人公の欠点、弱点を示す。

欠点や弱点は、繰り返しのモチーフや伏線として使われる。

 

以上を冒頭10分間で。

3~4シーンが適切。

 

4. きっかけ(12)

絶対に12分め。

セットアップで設定した世界に、人生を変えるような瞬間が訪れる。

良い知らせとは限らない。

 

5. 悩みのとき(12~25)

主人公が、何かしら疑問を抱く。

「そんなこと、できるわけない!」と主人公が言う最後のチャンス。

 

6. 第1ターニングポイント(25)

1幕(テーゼ)と2幕(アンチテーゼ)の境目。

何かが起きなければいけない。

主人公は新しい世界に入るために、明確な意志を持って行動しなければならない。

 

■2幕(アンチテーゼ)

7. サブプロット(30)

メインプロットとは、視点が異なる。

サブプロットは、ラブストーリーが多い(友情の場合もある)。

セットアップで紹介していない人物が登場する。

 

8. お楽しみ(30~55)

ポスターや予告編で使った部分。

観客に対してお約束を果たす。

カーチェイス、バディのふたりが喧嘩をする、突然身についた力を試すなど。

独立したアクションシーン、またはシークエンスを「セットピース」という。

セットピースは、ストーリーを進展させたり、登場人物に対する理解を深めるものではない。

ミッドポイントまでは、危機的状態は起こらない。

他のビートよりも、トーンは軽く。

セットピースは都合に合わせてカット、変更できる。

 

9. ミッドポイント(55)

55ページは最重要な分岐点。

いきなり危険度がアップし、映画全体の流れを変える。

サブプロットとセットピースから、メインプロットに戻る。

主人公は、絶好調or絶不調になる。

「すべてを失って」とは対になる。

 

10. 迫り来る悪い奴ら(55~75)

脚本を書くときに、最も苦労するビート。

敵は、一致団結して逆襲を始める。

味方は、疑いや嫉妬で結束力が弱まり始める。

 

11. すべてを失って(75)

対になる「ミッドポイント」とは、真逆の状況になる。

ミッドポイントの絶好調から絶不調になる(または、絶不調から絶好調)。

絶不調には「死の気配」を付け加える。

指導者や師が死ぬことが多い。

友人の死、花が枯れるでもよい。

 

12. 心の暗闇(75~85)

夜明け前の闇。

主人公は徹底的に打ちのめされ「解決策」は見つからない。

重要なビートだが、5秒で終わる場合もあれば、5分続く場合もある。

 

13. 第2ターニングポイント(85)

主人公が「解決策」を見つける!

メインプロットとサブプロットが出会う地点。

 

以下、古典的なパターン。

主人公は、サブプロット(ラブストーリー)に登場する女の子から「解決策」のヒントをもらう。

「解決策」と同時に、女の子との恋愛を予感させる。

 

■3幕(ジンテーゼ)

14. フィナーレ(85~110)

アンチテーゼでの経験が、新たな道を切り開く。

小物から始まって、最後は強力な親玉との対決。

敵は一掃されなければならない。

メインプロット(敵との対決)もサブプロット(恋愛)も、主人公が勝利して終わる。

 

15. ファイナルイメージ(110)

「オープニングイメージ」と対になるビート。

本物の変化が起きたことを見せる。

アンチテーゼの積み上げが足りないと、良いファイナルイメージを作ることはできない。

 

 

【Chapter 5】

ボードとカードを使って構成を練る

ボードとは、脚本を目で確認するための道具。

シーン、ストーリーの軌道、アイデア、セリフ、テンポなどを、ボード上でカードを動かしながら試行錯誤する。

 

ボードの作り方

横長のボードを水平に4等分する。

1列目は、1幕すべて(1~25ページ)。

2列目は、2幕の冒頭からミッドポイントまで(25~55ページ)。

3列目は、「迫り来る悪い奴ら」から「第2ターニングポイント」まで(55~85ページ)。

4列目は、3幕すべて(85~110ページまで)。

 

カードの書き方

1枚のカードに、1シーン。

 

1行目は、シーンの起きる場所。

例「室内/喫茶店/昼間」

 

2行目は、シーンで起きる基本的なこと。

例「ジョーは秘密を抱えるメアリーと葛藤する」

 

3行目は、「+/-」の記号で、感情の変化を表す。

「プラス(+)/マイナス(-)」or「マイナス(-)/プラス(+)」のように、シーンごとに感情が変化しなければならない。

例「+/- ジョーは最初は前向きだが、最後は失望する」

 

4行目は、「><」の記号で、葛藤(対立)を表す。

物理的、肉体的、言葉での葛藤。

人間vs人間、人間vs自然、人間vs社会など。

1つのシーンに、1つの葛藤が原則。

例「>< ジョーはメアリーの秘密を知りたいのに、メアリーはどうしても言えない」

 

1列あたり、10枚。

最終的に残すカードは、40枚。

つまり、40シーン。

 

バックストーリー(始まる前に起こった出来事)は、1つのシーンに集約する。

 

カーチェイスやアクションなどは複数シーンになるが、1つのシークエンスなので「追跡」というカード1枚にまとめればよい。

 

各登場人物のストーリーごとに色分けをする。

誰と誰のストーリーが絡み合っているかが、一目でわかる。

 

 

【Chapter 6】

脚本の黄金ルール

■SAVE THE CAT!

危険の迫った猫を助けるシーンなど。

観客が主人公に、最初から共感できるようにすること。

ついつい主人公を応援したくなる状況を、冒頭に作る。

主人公が悪人の場合、敵はもっと悪く描く。

 

■プールで泳ぐローマ教皇

観客を映像に釘付けにしておいて、その隙に面倒な状況説明をしてしまう。

 

■魔法は1回だけ

現実離れした設定は、1度しか通用しない。

 

■パイプの置きすぎ

伏線を張りすぎない。

ストーリーの前提と状況説明だけで、40分もかけてはいけない。

 

■黒人の獣医

よいアイデアも適量だったら効果的だが、多すぎるとマズい。

アイデアをトッピングしすぎると、味がボケる。

 

■氷山、遠すぎ!

悪役が、はるか遠くに離れている。

攻撃されても、スピードがあまりにノロい。

危険があまりゆっくり迫ってきても、全くハラハラしない。

今そこにある危機でないとダメなのだ。

 

■変化の軌道

登場人物はすべて、ストーリーのなかで大きく成長しなければいけない。

悪役以外は「全員が変化する」。

人生で成功するということは「変われる」ということなのだ。

 

■マスコミは立ち入り禁止!

「私たちだけの秘密」が、秘密でなくなってしまう。

マスコミを入れてしまうと、第4の壁を壊す。

第4の壁とは、観客と舞台を分ける幕。

映画全体の前提が壊れてしまうのだ。

 

 

【Chapter 7】

脚本の問題点を修正する

もし悩んだら、必ず修正すること。

自分で問題点に気づいた場合、脚本を読む人も問題点に気づいている。

 

■主導権を握るのは主人公

主人公は、自ら率先して行動しなければいけない。

たいした理由もなく登場したり、動機や目的があいまいでは成立しない。

 

1. 主人公の望みや目的は「セットアップ」で明確に提示する。

ストーリーが進展するなかで、行動やセリフで繰り返し目的を提示すること。

 

2. 苦労もなく、何もかも上手くいきすぎる場合は、何かが間違っている。

主人公は自らの力で、運命を切り開かなければならない。

 

3. 主人公は行動的か?

情熱がなかったり、面倒くさがったり、ただ悩んでいるような人間。

そんな主人公では困るのだ!

 

4. 主人公は決して質問しない。

主人公には、答えが分かっているもの。

主人公のセリフに「?」がたくさん付いているときは要注意。

 

■セリフでプロットを語っていないか?

素人は、登場人物の背景説明をセリフで処理しがちになる。

過去や背景説明は、短く処理する。

そのためにはセリフで語らず、主人公の行動で見せる。

 

■悪い奴は十分に悪く

主人公の問題を解決しても、脚本が良くならない場合がある。

この際の問題は、主人公ではなく悪役なのだ。

主人公を、危険や難問から守っても仕方がない。

 

真のヒーローには、強烈な敵が必要になる。

主人公と悪役は、人間の表裏のように対の存在。

両者を互角の強さにして、悪役に恐ろしさを付け加える。

 

■「ミッドポイント」以降、ストーリーは加速し緊張感は増しているか?

ストーリーの前進とともに、登場人物の詳細や行動理由が明らかになっていること。

速度や複雑さを増しながら、クライマックスに到達しなければならない。

「ミッドポイント」以降は徐々に加速していき、3幕で勢いも感情も爆発させる。

 

前進するたびに回転も加えて、新たな面に光を当てる。

次々と別の側面や詳細を見せて、観客を驚かせて心をつかむ!

 

■カラフルな感情のジェットコースター

全編が笑いだけや緊張感だけでは、観客は満足できない。

観客は、笑ったり泣いたり、興奮したりゾッとしたり、後悔や怒り、欲求不満や不安などを感じ、最後には息をのむような勝利を欲している。

感情的に単調では、現実逃避できないのだ。

ときには、感情の息抜きが出来る部分も必要。

 

■セリフに重要性があるか?

どのセリフにも意味がある。

登場人物にはそれぞれに、特有の話し方がある。

人物名を隠しても、誰が話しているか分かるだろうか?

 

■主人公の感情は、最初と最後で変化しているか?

感情が変化する前を描かないと、ストーリーが進行する意味が出ない。

ストーリーの冒頭の感情は、最終地点から出来るだけ遠くに設定する。

 

■どの登場人物にも、見た目の特徴が必要

例えば「松葉杖と眼帯」。

登場人物が多い場合、特徴を持たせないと区別が付かなくなる。

 

■原始人でも分かるか?

原始的に。

観客が、1番基本的なレベルで共感できなければならない。

ハリウッド映画の観客は、中国や南米にも数多くいるのだ。

 

原始的とは何か?

1. 生き延びること

2. 飢えに打ち勝つこと

3. セックスすること

4. 愛する者を守ること

5. 死の恐怖に打ち勝つこと

 

【Chapter 8】

脚本を売る方法と心構え

この後は巻末まで、エージェントやプロデューサーとの人脈作りやプレゼン方法が記されている。

この「まとめ」では割愛する。

 

 

以上は、脚本術「SAVE THE CATの法則」のエッセンスのみを「まとめ」たものである。

書籍には著者の経験から得た、具体例が豊富に書かれている。

映画脚本に興味があれば、全編を読んでみることをオススメしたい。

 

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